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猫ちゃんの咬傷(2)

前回猫ちゃんの咬傷について少し記事にさせて頂きました。

それに続き、今回・次回も咬傷について。

咬まれてしまうことにより

猫のエイズウイルスや白血病ウイルスに感染してしまう可能性を

ご存知の方は多いかと思いますが、

それ以外に怖い病気として、膿胸(のうきょう)という病気があります。

どのような病気かというと呼んで字の如く、膿が胸に貯まってしまう病気です。

咬まれてバイ菌が胸の中に入ってしまい胸の中が膿んでしまいます。

胸に膿が貯まるといっても最初から大きな怪我や傷があるわけではなく、

胸の皮膚に少し咬まれた傷がある程度でも、この膿胸まで進行してしまうことがあります。

咬まれてしまった時に牙の先端が胸の中まで届いているのでしょうが、

いきなり胸の中が化膿するわけではなく、

傷が小さいため最初は咬み傷以外に異常がないことも珍しくありません。

しかし次第に胸に膿がたまって悪化し、

咬まれてから数週間経ってから症状が出ることが多いようです。

ですので、当院では胸を咬まれた猫ちゃんの場合、

必ず定期的に体調確認に来て頂くようにお話しますが、

傷が改善して体調も問題ないとそのまま自宅で様子を見てしまい、

来院して頂けないことがあります。

しかししばらく経ってから呼吸の異常や食欲不振がでてきてしまうことがあります。

この膿胸という病気は手遅れになると致命的になります。

また治療も胸腔洗浄といい、胸に管を入れて胸の中の膿を出し、

また胸の中に綺麗な生理食塩水などを入れて洗浄する方法を繰り返す必要があり、

治療もなかなか大変です。

通常は胸のレントゲン写真で心臓が白く、
肺は黒く写る(1枚目の写真、黄色の丸が心臓)のですが、
膿胸の子では(写真左側)、心臓の形がわかりにくくなっています。
これは胸の中に膿が貯まってしまい、黒く写るはずの部位が白くなっているためです。

↑の写真のように、この猫ちゃんも胸に管を入れて胸の中の膿を抜き取り、
胸腔洗浄・点滴・抗生剤治療などを行い元気になりました。
一時は非常に重篤な状態でしたが、
頑張ってくれました。
猫ちゃんに多い病気ですが(咬まれてしまうことが多いため)、
ワンちゃんでも起こる病気です。
また咬傷以外でも植物の種(稲やススキなどのノギ)を吸い込んでしまい、
それが肺を傷つけ、胸の中に膿が貯まってしまうことがあるようです。
咬傷は多数飼育だと自宅でも起こることがあるため、
完全に防ぐことは難しいですが、
これからの時期は猫ちゃんの外出は要注意ですので、
気をつけてあげてください。
咬まれてしまった場合には、すぐにご来院下さいね。