土曜から急に寒くなりましたね。
土日と学会で横浜へ行く予定があったのですが、
天候の関係で日曜日だけの参加になってしまいました。
土曜午後・日曜と休診としてしまい、ご不便をお掛けしました。
さて、今回はハムスターちゃんのデキモノの治療です。
デキモノの正体にも色々とありますが、
ハムスターの子は悪性腫瘍(いわゆるガン)の発生が比較的多い動物です。
皮膚や内臓・骨など様々な部位にデキモノができますが、
身体が小さく、検査や治療が難しいことも多々あります。
3ヶ月のまだ若いハムスターちゃん、
前足が腫れてきたとのことでした。
診察してみると、たしかに前足がパンパン。
デキモノの原因にも炎症による影響や膿の貯留、良性腫瘍・悪性腫瘍などがあり、
さらにその中でも色々と細かく分かれますので、
治療方針を立てるためにまずは簡易的な検査として、
細胞診検査という、デキモノに針を刺してどのような細胞が取れるかの検査を行いました。
その検査結果からはどうやら悪性腫瘍のようでした。
右足が紫色でパンパンになっています。
また下のレントゲン写真も麻酔をかけた時に撮影したものですが、
向かって左側の前足に大きな白い影がはっきり写っています。
上の画像と同じものですが、赤い丸の中の白い部分がデキモノで、
黄色の丸の中は、デキモノの影響で骨が溶けてしまっている部位です。
大きな負担になるような治療は避けたいものですが、
薬での治療は不可能と判断しましたので、
飼い主さんと相談して、手術で取る事になりました。
といってもデキモノだけ取る訳ではなく、
デキモノの周囲を含めて切除するため、
かわいそうですが前足ごと取る、断脚手術になりました。
犬や猫・小動物の子でも当然ですが、
脚を切り取ってしまう手術などしたくはありません。
(その他の手術もしなくて済むなら、当然したくはありませんよね)
当然痛みもありますし、
ハムスターの子の場合、前足を器用に使って食事をするので、
食事も慣れるまでは大変になります。
ですが、この子の場合、断脚手術をせざるを得ない状況でした。
手術は、抗生剤の注射・簡易的な点滴を行い、ガス麻酔で全身麻酔をかけて実施。
この画像は手術前の麻酔をかけている最中の画像ですが、
デキモノの前側に見える紫色の筋は血管です。
こういった血管を切ってしまうと結構な量の出血が起きるため、注意が必要です。
ワンちゃん・猫ちゃんなら問題ない程度の出血でも、
体重が数十グラムしかないハムスターの子ですと、大出血です。
出血させないよう注意して太い血管だけを縛り、デキモノを切除しました。
手術中の画像がこちら。
皮膚を切ると中にデキモノの本体が見えます。
(赤い線がデキモノの輪郭、緑の線が頬袋の輪郭です)
デキモノの切除後は、皮膚を細い吸収される糸で縫合して、終了。
糸が皮膚の外に出ると糸をかじって傷が開きやすくなってしまうため、
今回は糸が体の外に出ないように皮膚の内側から縫いました。
麻酔からの覚めもしっかりしていていましたが、前足が片方なくなってしまったため、
当初はバランスの取り方や食事が大変そうでした。
抗生剤・痛み止め・お腹の動きをよくする飲み薬などを使用して、
また流動食を定期的に与えるようにして、術後2泊で退院。
そして本日術後のチェックに来てくれたのですが、その様子がこちら。
傷口の様子も問題なく、元気で食事もうまく食べれるようになってきたとのことでした。
デキモノの病理検査結果ではやはり悪性腫瘍とのことでしたので、
今後の再発・転移が心配ですが、
何事も無くこのまま元気で過ごしてくれるとうれしいですね。
ハムスターちゃんも病気は決して少なくありません。
小さな子達ですので、検査・治療もなかなか大変ですが、
異常を感じたらすぐに主治医の先生に相談してあげてくださいね。
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